無期限先物と資金調達率
無期限先物は、満期のない先物です。満期のある先物は満期日に現物価格へ収束しますが、無期限先物にはそうした日がないので、価格を現物の近くにつなぎとめておく仕組みが別に必要です。それが資金調達率(ファンディングレート)です。先物が現物(インデックス価格)より高く取引されると資金調達率はプラス側へ、安く取引されるとマイナス側へ動き、プラスのときはロングがショートに、マイナスのときはショートがロングに払います。取引所が取る手数料ではなくトレーダーどうしでやり取りするお金で、精算時刻にポジションを持っているときだけ受け払いが発生します。
バイナンスの資金調達率はどう決まるか
バイナンス USDⓈ-M 無期限先物では、ビットコイン・イーサリアムのような大型銘柄は8時間ごと(UTC 0時・8時・16時、日本時間9時・17時・1時)に精算し、4時間ごとに精算する銘柄も多く、1時間ごとの銘柄もあります。8時間周期を基準にすると、資金調達率はプレミアム(先物がインデックスよりどれだけ高く取引されたか)に、「金利 − プレミアム」を ±0.05% の範囲に収めた値を足して決まり、金利部分は基本で8時間あたり0.01%です。そのためプレミアムが −0.04%〜+0.06% の間なら資金調達率はちょうど0.01%になり、チャートでもこの値がよく見られます。受け払いの金額は、ポジション価値(マーク価格 × 数量)× 資金調達率です。
1万 USDT のロング、資金調達率 +0.01%:精算1回で 1 USDT を払う 同じポジション、資金調達率 −0.05%:5 USDT を受け取る 4時間周期なら1日の精算は6回(8時間周期は3回)
資金調達率のチャートの読み方
資金調達率は先物が現物よりどれだけ高く取引されたかを反映するので、大きくプラスなら、ロング側が値を上げながらより積極的に買ったと読まれます。一度跳ねた値より、何回もの精算にわたって続いた流れのほうが多くを語ります。周期の違う銘柄どうしは、8時間基準に換算して比べる必要があります。このサイトの資金調達率ダッシュボードは、8時間換算で +0.05% 以上を「ロング過熱」、−0.05% 以下を「ショート優勢」と表示しますが、これは区間の名前にすぎず、価格の方向の予告ではありません。表に出る値は精算の直前まで変わり続ける予想値だという点も覚えておきます。
未決済建玉:残っている契約の量
未決済建玉(OI)は、まだ決済されていない契約の総量です。先物はロング1枚ごとに反対側にショート1枚があるので、約定の両側がどちらも新しいポジションなら増え、両側がどちらも既存のポジションを閉じるもの(清算を含む)なら減り、片方が入って片方が出ていくなら変わりません。そのため価格と一緒に見れば、動きが新しいポジションで起きたのか、既存のポジションが抜けながら起きたのかを推し量れます。図の急落区間のように価格と OI がそろって大きく減れば、ロングの手仕舞い・清算が集中したとよく解釈されます。OI を USDT の金額で見ると価格が上がるだけで増えるので、コインの数量ベースで見るほうが正確です。
価格↓ OI↓ 価格↑ OI↑ 価格 未決済建玉 OI 例: 上は価格、下は未決済建玉(OI)です。前半では価格と OI がそろって増え、急落区間では両方がそろって大きく減りました。急落区間はロングポジションの手仕舞い・清算で下がったものとよく解釈されますが、この2本の線だけでは断定できません。
価格と OI の4つの組み合わせ
価格と OI の向きを組み合わせると、4通りになります。よく使われる解釈は下のとおりですが、どれも推定です。すべての契約にはロングとショートが一緒にあるので、OI が増えたということは、新しいロングと新しいショートが同じ量だけできたという意味です。「新しいロングが入った」という言い方は、どちらがより急いで成行で入ったかを、価格の向きから推し量ったものです。1つの取引所、1つの銘柄のデータだという点もあわせて見る必要があります。
価格↑ OI↑:新規ロングの流入が主導した上昇と解釈 価格↑ OI↓:ショートの手仕舞い(ショートカバー)が主導した上昇 価格↓ OI↑:新規ショートの流入が主導した下落 価格↓ OI↓:ロングの手仕舞い・清算が主導した下落
ロングショート比率は3種類ある
先物全体のロング契約とショート契約は常に同じ量なので、ロングショート比率は契約の数ではなく別のものを測ります。バイナンスが公開している比率は3種類で、それぞれ違う対象を見ます。全アカウントの比率は人数の偏りに近く、上位トレーダーのポジション比率はお金の大きさに近いものです。2つが逆に動くこともありますが、どちらが正しいかは決まっていません。比率1.5は、ロング60%・ショート40%を意味します(ロングの割合 = 比率 ÷(1 + 比率))。
全アカウント:ロングを持つアカウント数 ÷ ショートを持つアカウント数 上位トレーダーのアカウント:証拠金上位20%のうちロングのアカウント数 ÷ ショートのアカウント数 上位トレーダーのポジション:上位20%のロングのポジション規模 ÷ ショートの規模
テイカー買い/売り比率
約定1件には、注文を出して待っていた側(メイカー)と、その注文をすぐに取った側(テイカー)がいます。テイカー買い/売り比率は、成行で買った出来高を成行で売った出来高で割った値で、1より大きければ、その時間の間は買う側のほうが急いでいたという意味です。約定した量そのものは買いと売りが常に同じなので、この比率は誰がより多く買ったかではなく、どちらが板で待たずにすぐ約定させたかを示します。短い足では、数件の大口注文でも大きく揺れます。
偏りは方向ではなくリスクの大きさ
資金調達率が大きくプラスで、OI が増え、ロング比率まで高いなら、ロング側にレバレッジが積み上がっていると読めます。この状態で価格が逆向きに急に動くと、清算が次の清算を呼ぶ連鎖が大きくなることがあります。しかし偏りがいつ解消されるのか、解消される前に価格がさらにどこまで進むのかは、これらの数字からは分かりません。偏りは次の方向ではなく、急変が来たときに動きがどれだけ大きくなりうるかに関わる情報と見るほうが正確です。清算レーダーでは、実際に清算が集中する様子を見られます。
データの限界
バイナンスは、未決済建玉・ロングショート比率・テイカー比率の統計を直近30日分しか公開していません。そのため数か月前、数年前と比べたり、長い期間で検証したりするのは難しくなります。また1つの取引所の数字なので、ほかの取引所や現物市場の動きは含まれていません。レバレッジと清算の仕組みは暗号資産のテーマにある「借りたお金で取引するときに起きること」の記事に、さまざまな市場指標の受け止め方は「市場の指標が実際に示していること」の記事に、それぞれまとめました。
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